選択性緘黙⑧講演会

幼稚園に入園し、花が4歳になった頃

友達から「選択性緘黙の講演会」に誘われた。

長野大学 社会福祉学部 高木潤野先生による講演だった。

医療・教育関係者、当事者の親御さんなど200人近くが参加されたと記憶している。

一番前の席に座り、配られた資料に一通り目を通した。

講演会の冒頭で発せられた

「緘黙は適切な対応によって改善させることが出来る」

という言葉に力をいただいたのは私一人ではなかったはず。

すでに「不適切な対応」で娘を困らせた経験がある私としては

気が引き締まる言葉でもあった。

「緘黙とは何ぞや」から始まり

「緘黙の治し方」

「保護者の方にしてほしいこと」

「学校との連携の仕方」

など、本当に分かりやすく、当事者とその親に寄り添った内容だった。

「話せないことを、緘黙の子自身が一番困っている」

と先生がおっしゃった時

申し訳なささに思わず涙が出た。

なぜなら

「花がちゃんと話さないと、周りの人が困っちゃうよ!」

と何度言ったことか。

時間が戻せるのなら、その時に戻って

「この子が一番困ってるんだよ。わかってあげて」

と、自分に言いたい…

緘黙と診断される前だったから仕方ない、とは言え

申し訳なくて、申し訳なくて。

講演会の最中なのに

それをきっかけに「選択性緘黙」と診断される前のことを

次々と思い出しては

ひそかに落ち込んでいた。

それは、保育園の遠足でのお弁当時間だった。

先生が子ども達の写真を撮っていると、花だけ暗い顔をしていたそう。

「笑って~!」と声を掛けたらしいがうつむいたまま。

「どうしたの?」と先生が聞くと

友達のフォークを指でさして

自分の顔の前で「無い」というように手を振ってジェスチャーをしたらしい。

先生が、持参していたフォークを渡すと

安心したように食べ始めたそうだ。

その時も私…

「今回は大したことじゃなかったから良かったけど

もし、命にかかわることだったら大変よ。

ジェスチャーだけでは伝えきれないことがあるんだよ。

お家では上手に話せるんだから、出来るよ!頑張ろう!」

と言ってしまった。

頑張って出来るようになることではないのに、、。

その時の花の表情はどうだったっけ…

今となっては思い出せないけど

かわいそうなことを言ってしまった。

ちなみに、フォークはちゃんとリュックに入っていたのだが

探せなかったようだ。

鏡の前で大きな口を開けて

「おうちではこ~んなに大きな声が出るのに

どうしてほいくえんではしゃべられないんだろう…?」

と言って、悩んでる姿も見た。

そして、一番衝撃的だったのは『アラジン』を読み聞かせている時だった。

「花なら、ランプの魔人に何をお願いする?」

という何気ない私の問いに

「みんなみたいに しゃべられますように」

…と間髪入れずに答えたのだった。

私は思いがけないタイミングで

花の悩みの深さを知る事となった。

『おひめさまになれますように』や

『ディズニーランドに行けますように』という

子供らしい願い事を言うもんだと思っていた。

事あるごとに「どうして話さないの」と平気で聞いてくる私に対して

小さな体を縮め、申し訳なさそうにしていることもあった。

『なぜ人前だと話せないんだろう』と小さいながらに戸惑い

みんなと同じように話せない自分を責めることもあったかも知れない。

そう考えるとやりきれない気持ちになった。

いくら緘黙について知らなかったとしても

もう少し接し方を考えるべきだったのではないか、と今となって後悔。

だけど、後悔しても時間は戻せない。

もう、出来る事からやっていくしかない。

やっと本当の意味で気付かされたんだから。

何をすべきなのか…?

私には何が出来るのか…?

緘黙についてたくさん学ぼう。

まだ幼いお友達に理解を求めるのは難しいから

まずは周りの先生や、お友達のお母さん達、そして親戚など

花に関わる方に緘黙を理解してもらおう。

特に幼稚園。

一日の大半を一緒に過ごす幼稚園の先生方へ

適切な対応をしていただく為に

具体的な対応方法について

お話をさせていただこう。

幼稚園を、花が花らしくいられる場所にするため

私に出来ることは何でもやろう。

と、緘黙を克服する2年前の日記に私はそう綴っていた。

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